起業や副業をする際、簿記を持っていたほうがいいと耳にしたことがある方もいると思います。
起業を考えていたり、年間所得20万円以上の副業を考えているのであれば筆者は日商簿記3級レベルの知識は必須と考えています。
その理由として、確定申告時に必須となる帳簿作成における時間と労力が削減できたり、自身の財務状況の把握ができたりなどさまざまなメリットがあるからです。
一方で、年間所得が20万円を超えない副業を考えている方は帳簿の作成は必要ないため、簿記の知識は必須ではないと考えています。
筆者は副業で個人事業主として開業届を出した後に簿記3級を取得したのですが、簿記を取得しておいてよかった!と思うことがたくさんあったので、この記事では実際の体験を踏まえて簿記を取得するメリットや勉強方法を詳しく解説します。
- 簿記がどんなものか知りたい、取得するメリットを知りたい
- 簿記の資格を取りたいがどう勉強したらいいのかわからない
- 勉強するのにおすすめのサイトやテキストを教えてほしい
など、簿記について詳しく知りたい方はぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
簿記とは?
簿記は、ビジネスにおけるお金の取引や持っている資産の価値を記録する大事な技術です。
収支や資産、負債などの経済活動を記録し、組織の財務状況を把握することができます。
簡単に言うと、商品の売り上げやお金の使い方、借金の管理など、お金に関する情報を書き留めることで、会社や個人は自分たちのお金の状況を把握し、将来の計画を立てることができます。
主な簿記資格の種類には、日商簿記や全経簿記、全商簿記、他にも公認会計士試験のための簿記などがありますが、本記事では日商簿記に焦点を当てます。
日商簿記では一般的な企業や個人事業主が日常的な経理業務を遂行するための基本的な知識を身につけることができます。
1級、2級、3級、簿記初級(旧4級)の試験があり、商工会議所で行われる統一試験とテストセンターで受験するCBT形式(ネット試験)があります。2級と3級はネット試験であるCBT形式で通年受けられます。
3級が経理・会計、財務の知識をつけたい方の入門資格なので、まずは3級を目標に勉強してみましょう。
起業を目指す人や副業で確定申告をする人が簿記を取得するメリット
帳簿作成における時間と労力が削減できる
なんといっても一番のメリットは帳簿作成における時間と労力が削減できることです。
帳簿とは事業で発生する取引データを記録する書類のことです。いつ、どのくらいの売り上げがあったか、仕入れにいくら使ったのかなど帳簿は日々の取引を把握するのに必須です。
帳簿は青色確定申告、白色確定申告を行う人は作成が義務付けられています。
会計ソフトや会計アプリは帳簿を作成するうえでとても便利ですが、何もわからない状態から帳簿の作成を始めようとすると、税理士との契約が必要になったり、取引をどう処理していいのか分からず、都度非効率な調査や勉強を強いられることになってしまう可能性があります。しかし、簿記の知識があることで、大幅な時間と労力の削減や、結果的に費用の削減に繋がります。
帳簿の作成や確定申告でわからないことが出てきた際に、簿記の基礎知識があると解決までの時間が短くて済みます。
とはいえ、個人事業主やフリーランスになりたてだったり、起業したてのころは経費といえどなるべく出費は押さえたいところ。
例えば、会計ソフトやアプリを使うと、やよいの青色申告オンラインは年額¥9,680~、マネーフォワード クラウド確定申告は年額¥10,800円~、freee会計は年額¥11,760円~などの費用がかかります(以下参照)。
しかし、簿記の知識を使えば、なるべくコストをカットしたい方はExcelやスプレッドシートなどで帳簿をつくることも可能です。この場合はお金はかからないですが、時間や労力はかかるので自分が何を重視するのか考えつつ手段を検討しましょう。
財務状況を把握できる
起業や年間所得20万円以上の副業を行っている場合は財務状況を把握するのは重要です。
簿記の知識を得れば財政状況や経営成績を開示する財務諸表の中でも企業の利益を見れる損益計算書(P/L)と財政状態を見れる貸借対照表(B/S)の内容が理解できるようになるので、財務状況を把握できるようになります。
会計ソフトや会計アプリを使っていれば帳簿の内容から自動で財務諸表を作成できます。それらを見ることで費用や収益率を意識するようになるので財務状況の向上にも繋がります。
簿記の知識があることで今後の戦略も立てやすくなるでしょう。
また、取引先が上場企業の場合、四半期ごとの決算で財務諸表が公開されるので、取引先の経営状況が把握できリスクの軽減に繋がります。
日商簿記合格までに必要な勉強時間
日商簿記に必要な勉強時間は下記と言われています。
1級 | 400~600時間 |
2級 | 100~200時間 |
3級 | 50~100時間 |
初級(旧簿記4級) | 30~60時間 |
また、級を続けて勉強することで勉強時間を短くすることが可能です。
2級や1級まで合格を目指す方は合格後も間を空けずに次の級の勉強を開始したいですね。
最短で合格を目指す簿記の効率的な勉強法と注意点
1.概要を把握する
まずは日商簿記試験の概要を公式サイトで把握しましょう。
2024年3月現在ですと試験時間や合格基準は下記のようになっています。
受験級 | 試験科目 | 試験時間 | 合格基準 |
1級 | 商業簿記・会計学 工業簿記・原価計算 | 90分 90分 (計180分) | 70%以上 ただし、1科目ごとの得点は40%以上 |
2級 | 商業簿記・工業簿記 | 90分 | 70%以上 |
3級 | 商業簿記 | 60分 | 70%以上 |
初級 | 簿記の基本原理と取引処理 | 40分 | 70%以上 |
「商業簿記」は購買活動や販売活動など、ほかの企業との取引を記録・計算する技能です。
企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
「工業簿記」は企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識です。
2級、3級であれば独学でも十分に合格が目指せます。
また、試験の概要を把握し勉強を始めるタイミングで試験に申し込んでしまえば危機感も生まれ、計画性をもって勉強を進めやすくなります。
試験内容や前章で紹介した合格までに必要な勉強時間から逆算し、試験を受ける日程を考えてみましょう。
2.それぞれの単元を勉強する
テキストやWeb講義を使い、受験する級に必要な単元を一通り勉強しましょう。
テキストを買う場合は実際に中身を見て自分に合ったものを選び、最新の情報が載っている最新版を買うのが重要です。
次の章で簿記の勉強におすすめのサイトや書籍をご紹介するので参考にしてみてくださいね。
聞くだけ/読むだけではなく、例題なども自身で考え一緒に解くことで記憶の定着率が上がります。
3.問題を解く
一通りすべての単元を勉強し終えたらすぐに問題演習に取り掛かりましょう。
初めは一問ずつ答え合わせをしても良いですが、慣れてきたら試験と同じ形式で解いてみましょう。
合格基準はどの級も70%以上なので、完璧にすべてわかるようにしなければならないわけではありません。試験日までの時間と自分の理解度を鑑みて戦略的に勉強を進めましょう。
例えば3級の場合、大問が3つ出題されますが、第一問の取引の仕訳と第三問の決算問題だけで合格最低点分あるので、時間のない人はこの2つを重点的に対策すると良いでしょう。
4.弱点を克服する
問題を解いていくと苦手な項目が出てくると思います。重点的に復習し、類似問題を解いていきましょう。
自分の苦手な分野と向き合いつつも、大問ごとに実際の試験での時間配分も決め「これ以上悩んだら次の問題に進む」など基準を決めておくのもおすすめです。
簿記を勉強するうえでの注意点
自身が商工会議所で行われる統一試験を受けるのか、テストセンターで受験するCBT形式(ネット試験)を受けるのか決めておきましょう。
CBT形式(ネット試験)で受験する場合は、試験当日に慌てないよう操作方法や回答方法の事前チェックが必須です。
次の章で紹介するCPAラーニングでは本番と同じように解答できる無料の模擬試験があるので実際に解いて操作方法と回答方法に慣れておきましょう。
簿記の勉強におすすめのサイト、書籍
CPAラーニング
CPAラーニングとは、簿記3級・2級・1級や会計を完全無料で学べるe-learningサービスです。
完全無料でWebでの講義や模擬試験を受けられます。教科書と問題集もPDF形式で無料でダウンロードできるのが嬉しいポイントです。
教科書、問題集は手元に置いておきたい!という方は書店やネットで購入することも可能です。
運営元は大手公認会計士の資格スクールの「CPA会計学院」ということもあり、熟練の講師がわかりやすく講義、解説をしてくれます。
無料なので簿記を受けてみようかなと考えている方はまずは登録してみることをおすすめします。
みんなが欲しかった!簿記の教科書・簿記の問題集
こちらは書籍です。書店で簿記のコーナーに行けば必ずといっていいほど置いてある人気シリーズです。
この教科書の良いところは印刷がカラーで初心者にも親しみやすいようわかりやすく解説していることです。
簿記ってよく聞くけどよくわからない、独学で勉強を進めたいけれど不安という方もこちらの教科書を使えば安心して勉強を進められます。
CPAラーニングのWeb講義と合わせて使うのもいいですし、動画で勉強するのは苦手という方はこちらの教科書・問題集がおすすめです。
パブロフ簿記
パブロフ簿記はサイトを主軸にテキストもアプリも展開している便利なツールです。
サイトでは合格までの学習方法や初めての方への簿記の解説やコツを伝授してくれます。
アプリでは気軽に問題を解くことができるのでインストールしておくのがおすすめです。筆者は移動中に少し問題を解いたり、試験直前に見直すために使っていました。
3級と2級(商業簿記)のアプリは無料でインストールできます。
まとめ
本記事では、
- 簿記とは?
- 起業を目指す人や副業で確定申告をする人が簿記を取得するメリット
- 簿記合格までに必要な勉強時間
- 最短で合格を目指す簿記の効率的な勉強法と注意点
- 簿記の勉強におすすめのサイト、書籍
を解説しました。
起業したり、副業で確定申告をする場合、時間や労力の削減のためにも特に入門である日商簿記3級レベルの知識は必須と言っても過言ではないでしょう。
簿記資格を取得することで正しい帳簿を自力でつけられたり、確定申告や会社運営に活かせたりとメリットがたくさんあるのでぜひ効率的に勉強して合格を目指してみてくださいね。